|
|
|
達人紹介コーナー
|
|
前にも申し上げたと思いますが、日本で皆さまが親しんでいるジャズは米国で1930年代から1960年代に演奏され、歌われた曲が大半です。ニューヨークのライブハウスへ行って驚くのはアメリカは国が新しいためか、国民が新しい事が好きなためか、我々が親しんでいる古いジャズを聞くことはほとんどありません。その点ヨーロッパではまだ昔のジャズが残っているのは嬉しい。その意味でも我々は日本に残っている昔のジャズを大切にしようではありませんか。
しかし日本人がジャズを歌うのは大変難しいのが現実です。
まずジャズの歌詞が英語だからです。ヨーロッパやフィリピンの歌手がジャズを歌ってもそれぞれの国の訛りがあるのだから、日本人の歌手に日本の訛りがあっても、本場のアメリカの人たちにはかえってエグゾジックに聞こえるので、それはそれで良いのだが、発音を間違えては話しになりません。日本語ではRとLの発音がはっきりしない。その次に母音が日本語ではア、イ、ウ、エ、オの5つしかないのに対し、英語では母音は単母音と二重母音を合わせると30近くあるのだから大変。RとLを間違えたり、母音の発音を間違えたり、不明瞭な発音をしたら、何を歌っているのか聞いている人たちには判らないし、うっかりするととんでもないことになる恐れがあるので十分注意する必要があります。
勿論、今の日本のジャズ歌手の皆さまは一生懸命勉強しておられるので、終戦直後進駐軍が日本に入ってきたばかりの頃の歌手の方々よりはるかに英語の発音が上手になっていることは間違いありませんが、だからといって安心されては困ります。
幸い私は戦前の帰国子女で、学生時代は戦争中でも英語が好きでESSで勉強したお陰で、大学を卒業して商社マンになってからも大変英語が役に立った経験から、今では親しいジャズ歌手の方々に出来るだけ参考になるように英語の発音のヒントを教えるようにしています。
前にも申し上げたRとLの発音の例としてTenderlyのようにRとLが続いて出てくるとRに引っ張られてうっかりするとTenderryとなってしまうことがあります。そのときはTenderで一回切ってからlyを発音すればすんなり発音できるという具合に教えて、直ぐわかっていただけるとこちらもうれしくなります。
一番難しいのはジャズを歌うときにフィーリングを中でどうやって表現するかということです。もちろん歌詞を何回も読み、内容の意味をよく理解する事が必要ですが、本当に上手に歌うためにはそれ以上のものが必要なのです。私はその歌が紹介された映画のビデオをお貸しして、その頃の時代背景と映画の中のどのような場面でその歌が唄われたかを知ってもらうようにしています。そのためアメリカへ行けば時間を見つけてビデオショップに飛び込んでおもしろそうな映画を探したり、有名な作曲家たちの譜面アルバムを買ってきたりする努力をしています。もちろんあまりしつこくして嫌われないように十分注意しておりますが。
日本ではプロのジャズ歌手を目指して勉強している方が大勢いる一方、不景気の影響でジャズが唄えるお店が次第に減ってきているので大変だと思います。ジャズファンの1人として一日でも早く景気が回復して歌手の方々が思い切りジャズを唄える時期が来ることを楽しみにしています。 |
|
|
Copyright(C)2002 CPC Co., Ltd. All Rights Reserved |
|